2023.9.13-15 北陸への旅 富山・福井・石川

 

 

9月13日
 
国宝 瑞龍寺
快晴の朝、北陸新幹線で新高岡へ。主人のゼミの学生さんと合流し国宝、瑞龍寺を訪ねる。高岡の開祖、加賀前田家2代当主前田利長の菩提寺。壮大で豪壮、加賀藩百二十万石の財力を如実に示す荘厳なお寺。

 

 

 
真っ青な空と鮮やかな芝生の緑、影絵のようにくっきりと浮かび上がる社殿を眺めつつ、杮葺きの木の香りが漂う静寂な堂内を歩く。仏殿を囲むように左右対称に作られた回廊は美しく、お賽銭がペイペイで払える事に驚く。

 

 

 
富山新聞高岡会館  
谷口吉生氏設計による富山新聞高岡会館を見学。市民の方々のカルチャーセンターであり、バレエスタジオや作品展示室の充実ぶりは素晴らしく、ロビーも階段室も全てが美しく美術館のよう。

 

 

 
国宝 勝興寺
9月とは思えない酷暑の中、国宝、勝興寺を訪ねる。浄土真宗の寺院であり山号は「法輪山」、460年の歴史を誇るという。壮大な敷地に整然と並ぶ社殿、大広間や杮葺きの屋根が連なる光景にかつての生活を偲ぶ。

 

 

 
大所帯であった飯場や御所車のような牛車、差し込む光がしっとりと静かな影を作る美しい梁を眺め、ひんやりとした磨き上げられた木の床を裸足で歩く。

 

 

 
杮葺きの模型や、塗り壁の技法と素材の説明など、修復の過程の展示も興味深く、職人さん達の技量の高さに感服する。気が遠くなるような時間が費やされている事を想う。

 

 

 
道の駅 雨晴海岸
荘厳な国宝とモダンな新建築、コントラストの強い午前中の見学を終え海に面した道の駅へ。富山湾は日本海では最大の内湾、マスのパスタやシロエビのカレーなど富山湾で採れる魚貝のメニュウが美味しい。海を眺め波の音を聴きながら皆で海岸を歩くのも楽しく、貝殻を拾う。

 

 
 
 
 
ミュゼふくおかカメラ館
安藤忠雄氏設計のミュゼふくおかカメラ館を訪ねる。平成12年にオープンしたカメラと写真のミュージアム。開催中の「富井義夫 珠玉の世界遺産展」は世界中の世界遺産を撮った極彩色の写真たち、モノトーンの建物に色とりどりのビーズが散りばめられたよう。戦中戦後のカメラの歴史展示も興味深い。「ふくおか」はこの地域の旧地名とか。
 

 

 
西田幾太郎記念哲学館
2002年に安藤忠雄氏の設計によりオープンした世界的哲学者、西田幾太郎の業績を集めた資料館。日本海に沿って広がる内灘砂丘に、丘陵地の斜面を利用した広く長い階段庭園、丘の上に建つガラス張りの外観がパノラミック。

 

 

 
西田幾太郎は1870年(明治3年)に石川県かほく市(加賀国河北郡)に生まれ、1945年(昭和20年)鎌倉で75年の生涯を閉じた哲学者。日本最初の哲学書「善の研究」をはじめ多くの著作を残し「西田哲学」と称される思想は、今も世界的に影響を残しているそう。空の庭から流れゆく雲を眺め、博士の思想に思いを巡らす。

 

 

 
世の喧騒を離れ、哲学的な思索にふけり、自己をみつめるひとときを過ごす「思索の空間」は、西田哲学と安藤建築の融合とか。

 

 

 
展望ラウンジから複雑な博物館の全貌を一望する。静かで質素なイメージの哲学と、広大な敷地の巨大な博物館のコントラストに戸惑いつつ空を眺めると虹・・・、日本海、白山連峰を眺める。

 

 

 
石川県立図書館
2022年7月に金沢大学工学部跡地に、仙田満氏の設計によりオープンした石川県立図書館。延床面積19000㎡、開架冊数30万冊、書庫の収蔵能力は200万冊という巨大図書館。吹き抜けの天井を中心に、木の年輪を描くように配された閲覧席、円形劇場のような壮観な眺めに圧倒される。

 

 

 
加賀百万石に由来し「百万石ビブリオバウム」の愛称で知られ「ビブリオ」は図書、「バウム」は木の意味とか。一周160mの回廊式の閲覧空間や、図書館を360度見渡せるブリッジに立つと、木の年輪に迷い込んだような不思議な気分になる。

 

 

 
金沢市立玉川図書館・近代資料館
東宮御所や迎賓館和風別館を設計した谷口吉郎氏とご子息の吉生氏の、親子共同作品である図書館。平成8年にレンガ造りの別館が文化財に登録され、近代資料館となったそう。歴史の重みを感じさせるレンガの建物と、シンプルなデザインの建物のコントラストが美しく、中庭は赤レンガで繋がれた不思議な空間。

 

 

9月14日
 
快晴の早朝、ホテルの温泉で和む。露天風呂から空を眺め、まだ誰もいないサウナでのんびり。ラウンジでお茶を飲みながら金沢の街を一望する。

 

 

 
国宝 永平寺
曹洞宗の大本山として知られる永平寺は1244年、道元禅師により開山された禅の道場。7つの建物(七堂伽藍)と70を超えるお堂、楼閣が長い回廊で繋がっている。770年以上の歴史が生み出す圧倒的な荘厳さの中、今やフランス語になりつつある「ZEN」を想い静かに歩く。ゆく年くる年の除夜の鐘を思い出す。

 

 

 
福井県立恐竜博物館
2000年に黒川紀章氏設計によりオープンした福井県立恐竜博物館、恐竜の卵のような銀色の球体が緑の山あいに突如出現する異様な光景に驚く。1982年(昭和57年)に勝山市北谷でワニ類や恐竜の化石が発見された事が発端となり、 勝山市全域が恐竜渓谷ふくい勝山ジオパークとして認定される。2023年7月には新しい銀色ドームが増設され恐竜の卵が二つに。中国、カナダに並ぶ世界三大恐竜博物館。

 

 

 
四層吹き抜けの大空間を一直線に降りる圧巻のエスカレーターを降りると、その先に現れる柱のない大空間。動くティラノザウルスに迎えられ一気に恐竜時代へタイプスリップ、幻想的な背景に50体の恐竜骨格が並び、3つのゾーンに分かれた大展示ホールが続く。

 

 

 
恐竜の塔と名ずけられたエスカレーターホールには福井で見つかった恐竜5体と鳥一羽が空中に展示され、恐竜たちの中をすり抜けて階下に降りる。ガラス張りの見える収蔵庫も興味深く、3面のダイノシアターでは巨大スクリーンに実物大の恐竜たちが動き回る。

 

 

 
ザウルスキッチンで恐竜の焼き印の入ったハンバーガーと、ソースかつ丼、越前おろし蕎麦の福井名物セットの楽しいランチ。ミュージアムショップには恐竜のぬいぐるみから化石、本格的な骨格模型など興味深いグッズが並ぶ。壮大でロマン溢れる恐竜の世界にすっかり魅了され、ロビーに並ぶ不思議な形のソファも恐竜の卵に見えて来る。

 

 

 
平泉寺白山神社
恐竜の興奮も冷めやらぬまま、養老元年(717年)に開かれた平泉寺白山神社を訪れる。境内は一面の美しい苔で覆われ「苔宮」とも呼ばれるこの神社、明治の神仏分離令により寺号を廃止し白山神社となっているそう。苔と静寂の美しさに1300年を超える歴史を想う。

 

 

 
一乗谷朝倉氏遺跡博物館
内藤廣氏の設計による一乗谷朝倉氏遺跡博物館は、昨年オープンしたばかりの博物館。170万点にも及ぶ出土品の数々に戦国大名朝倉氏の権力と栄華を偲び、戦国時代を代表する城下町、越前と一乗谷の実像を多くの視点から垣間見る。

 

 

 
復元された悠久の朝倉館、壮大な館に戦国大名の文化に触れる。越前和紙で作られた中庭の花々、芳しい檜の匂いに当時の生活に思いを馳せる。

 

 

 
福井県立図書館・福井県文書館
槙文彦氏の設計による福井県立図書館、福井県文書館を見学する。7万㎡もの広大な敷地に入館者数、貸出冊数ともに全国一位、日本で最も利用されている図書館が建つ。静かなロビーには中庭に張られた水面の光が反射し、2003年の竣工とは思えないメンテナンスも素晴らしい。館内の特徴的な柱にアメリカのジョンソンワックス社を思い出す。

 

 

 
毎日2万歩越えのハードな旅も2日目を終え、まずはビールで乾杯。東京ではめったに食べない串揚げもこちらではポピュラーなおつまみの様。白エビの唐揚げも美味しく、明日はいよいよ金沢市内を巡る。

 

 

9月15日
 
金沢兼六園
水戸偕楽園、岡山後楽園と並ぶ日本三名園の一つ、兼六園は江戸時代の代表的な大名庭園として、加賀の歴代藩主によって作られて来た廻遊式の庭園。文化財指定庭園-特別名勝というだけあって、年輪を感じさせる巨木、見事に幹を広げた松などそのスケールもまた名勝。松の木を支えるシステムが興味深く、まだ朝早いのに既に沢山の人がいて驚く。

 

 

 
隣接する「いしかわ生活工芸ミュージアム 石川県立伝統産業工芸館」に立ち寄る。加賀友禅、九谷焼、山中漆器、輪島塗など石川県内の伝統的工芸品36品目全てを展示する唯一の施設で、絵蝋燭や檜細工、加賀水引、金箔が出来上がる工程も興味深い。展覧会「皇室と石川の工芸作家たち」を見る。

 

 

 
兼六園を出ると、日本で唯一の国立の工芸専門の美術館「国立工芸館」が見える広大なレンガの広場が広がる。明治期に建てられた2つの旧陸軍の施設を移築し復元した美しい景観、2020年10月の開館時以来、名誉館長を務めるのはサッカーの中田英寿氏という。岩水が流れる崖を下り、鈴木大拙館へ向かう。

 

 

 
鈴木大拙館
2011年に谷口吉生氏の設計により開館した鈴木大拙館。台地から続く斜面緑地を背景に、石垣や水景など金沢を象徴する景観の中で鈴木大拙の世界が展開される美しい美術館のような哲学の館。

 

 

 
回廊で結ばれた「玄関棟」「展示棟」「思考空間棟」、「玄関の庭」「露地の庭」「水鏡の庭」、この3つの棟と3つの庭からなる空間を回遊することによって鈴木大拙について知り、学び、考える哲学の空間。眩しい白壁とほの暗い回廊、水面に映る柳と微かな水の音、全てが美しく立ち去りがたい。

 

 

 
金沢21世紀美術館
金沢大学付属中学校・小学校・幼稚園があった広大な敷地に、2004年、SANAAの設計によりオープンした金沢21世紀美術館。地上2階、地下2階建ての「街に開かれた公園の様な美術館」がコンセプトとか。直径112.5mもの総ガラス張りの円形の建物、誰もがどこからでも気軽に入場できるようにと、4か所の出入り口があるのが特徴とか。

 

 

 
エレベーターもガラス張りのデザインで動くオブジェの様。SANNAはこの美術館でヴェネツィア・ビエンナーレ第9回国際建築展の最高賞、金獅子賞を受賞したそう。静かだった朝からは想像もできない大混雑、有名な作品「スイミングプール」はかなり前に予約しないと見られない。 アートを予約して見る時代に戸惑う。

 

 

 
近江町市場
金沢を城下町としていた加賀藩の御膳所だった近江町市場は、江戸時代の享保6年(1721年)に始まったという長い歴史を持つ。。牡蠣やホタテをその場で焼いて食べられる屋台からは香ばしい匂い、巨大なカニやほっけに驚きつつ、海鮮丼と焼き穴子丼に青さのお味噌汁でゴキゲンなランチ。

 

 

 
谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館
吉郎氏が設計した、迎賓館赤坂離宮和風別館「游心亭」の主和室と茶室が忠実に再現され、それを包み込む吉生氏の洗練された建築。建築家谷口親子の作品を同時に体験する事が出来る贅沢な空間。

 

 

 
柳宗理記念デザイン研究所
かつて金沢美術工芸大学で教鞭を取った、日本を代表する工業デザイナー、故柳宗理の足跡をまとめた「柳宗理記念デザイン研究所」。氏亡き後、金沢美術工芸大学が2014年に開設したショウルームのような研究所。日本各地の伝統技術を、柳氏の機能美溢れるデザインでプロダクト化した、ロングセラーの椅子やカトラリーが年代順に並ぶ。

 

 

 
ひがし茶屋街
浅野川を挟んだ主計(かずえ)町茶屋街と並び、金沢を代表するひがし茶屋街。情緒あふれる古い町並みは、重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。江戸時代のお茶屋の風情が残る、紅殻格子に美しい出格子と石畳が続く街並みに、カフェや伝統工芸品を扱うショップが並び、映画のセットに迷い込んだよう。外国人観光客の多さにコロナの終息を実感する。

 

 

 
お茶屋は芸妓が粋で雅な芸でもてなす大人の社交場。現在も五軒のお茶屋があり「一言さんお断り」のしきたりは今も守られ、特別な紹介がない限りお茶屋の中には入れないそう。格式ある割烹や、おしゃれな町屋カフェ、伝統工芸品を扱うお店が並び金沢らしい金箔を施した人形や、九谷焼などのお土産も楽しい。

 

 

 
金沢海みらい図書館
建築家ユニット、シーラカンスK&Hの設計 によりに2011年に開館した金沢海みらい図書館。外壁一面に並ぶ水玉模様は6000個の丸い窓、まるで海の中に浮かぶ泡のようなデザインの外観は、アメリカの旅行ガイド・フォダーズで「世界の魅力的な図書館ベスト20」に選ばれるなど国内外の多数の建築賞に選ばれているとか。

 

 

 
短くも長い北陸の旅もいよいよ終了、金沢駅に到着。金沢の伝統芸能である能楽で使われる鼓をイメージした圧巻の鼓門に迎えられる。年間降雨日数が全国で最も多い石川県「傘を差しだすおもてなしの心」がコンセプトの「もてなしドーム」は幾何学模様のガラス天井が続き、吸い込まれるようなエスカレーターで新幹線に向かう。世界で最も美しい14駅の一つに選出されているそう。

 

 

 
 
trip index 富山名物「ますのすし一重」やカニ飯弁当、ご当地クラフトビールと白エビビーバーを買い込み、新幹線の車内へ。北陸新幹線は2024年に福井まで延伸し、東京から福井まで乗り換えなしで行かれるようになるとか。2泊3日とは思えない、充実した北陸の旅も終わり霧の軽井沢に到着。ご一緒した皆さん に心から感謝! page top

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